有明海漁民・市民ネットワーク(HP仮オープン中)

【声明】国及び長崎県は福岡高裁の和解協議提案を
真摯に受け止めよ

有明海漁民・市民ネットワーク(漁民ネット)は本日、添付ファイルの声明「国及び長崎県は福岡高裁の和解協議提案を真摯に受け止めよ」を発表し、農水省、長崎県、福岡高裁に提出しました。

2021年5月20日

【声明】国及び長崎県は福岡高裁の和解協議提案を真摯に受け止めよ

有明海漁民・市民ネットワーク

1.福岡高裁の和解協議提案を歓迎する
 2021年4月28日、福岡高裁は、諌早湾干拓事業に関わる請求異議訴訟の差し戻し審において、当事者である漁業者及び国に対して「和解協議に関する考え方」を示した。この中で、福岡高裁は、「本件訴訟のみの解決に限らない、これを含む広い意味での紛争全体の、統一的・総合的・抜本的解決及び将来に向けての確固とした方策の必要性と可能性を意識」し、「これに何らかの方向性を作り出す機会を設定できないか、検討を続けてきた」と述べた上で、「各排水門の開門をめぐる一連の紛争経過を踏まえ、その根本的な解決を図るため、当事者双方に対して、和解協議の場についた上で、合理的な期間内に集中的に協議を重ねること」を求めた。
 私たちは、福岡高裁が提起した「統一的・総合的・抜本的解決及び将来に向けての確固とした方策」を、「柔軟かつ創造性の高い解決策」として模索するという考え方を歓迎するとともに、それが可能であることを確信している。また、そのために、さまざまな利害関係者を含め、「腹蔵なく協議・調整・譲歩する」ことに同意する。

2.国(農水省)は和解協議提案に誠実に応えよ
 しかし、福岡高裁から提言を受けたもう一方の当事者である国側は、この「考え方」への対応について国会で問われても、「係争中の訴訟に関わる対応」だとして、一切答えようとしないばかりか、開門しないことを前提とする「2017年の農水大臣談話に沿って解決することがベスト」と繰り返し述べている。これは、福岡高裁の提起に対して極めて不誠実であり、許しがたい対応である。
 今回の「考え方」で、福岡高裁は、この問題に関わる国側の責任について、「とりわけ、本件確定判決等の訴訟当事者という側面からではなく、国民の利害調整を総合的・発展的観点から行う広い権能と職責を有する控訴人の、これまで以上の尽力が不可欠であり、まさにその過程自体が今後の施策の効果的な実現に寄与する」と指摘している。現状の国側の対応は、紛争解決を目指そうとする福岡高裁の訴訟指揮に対する抵抗であり、責任放棄に他ならない。
 野上農水大臣は、前任者の江藤大臣の「さまざまな立場の関係者がバランスよく参加するのであれば、一堂に会して話し合ってもよい」との考えを踏襲するとしており、そこでは基金案を前提とするとは一言も述べていない。福岡高裁の「考え方」においても、幅広い関係者の意向や意見をふまえることが示されており、まさに大臣発言と一致するものである。国に福岡高裁の提起を拒否する理由は何らないのである。
 私たちは、国に対して、今回の福岡高裁の「考え方」を真摯に受け止め、「腹蔵なく協議・調整・譲歩する」姿勢で和解協議に応じることを強く求める。

3.長崎県は和解協議提案を真摯に受け止めよ
 これまで長崎県は、開門しないことを絶対条件とし、話し合いのテーブルにつくことに背を向けてきた。しかし、長崎県もまた紛争当事者の一員であり、国と同様に、今回の福岡高裁の「和解協議の考え方」に応じて、根本的な解決のための一層の尽力が求められている。従来の非開門の姿勢一辺倒では、世の中の理解は得られない。
 福岡高裁は「考え方」で、「国民的資産である有明海の周辺に居住し、あるいは同地域と関連を有する全ての人々のために、地域の対立や分断を解消して将来にわたる良き方向性を得るべく」「合理的な期間内に集中的に協議を重ねること」を求めている。長崎県は開門阻止派の住民を支える立場を明確にしているが、長崎県には漁業者をはじめ開門を切望している住民も暮らしている。全体の奉仕者であるべき行政(県)が、一方の住民のみに加担することは著しく不公平と言わざるを得ず、むしろ積極的に話し合いを進めるべき立場のはずである。長年にわたる諍いの中で、地域に対立と分断を招いた責任の多くが長崎県と国にあることは疑いがない。今こそ福岡高裁の和解協議の提起を真摯に受け止め、地域に真の和解と農漁共存の持続的な発展が達成されるよう尽力すべきである。

以 上